
漆。一滴から始まる日本の美。
Story 02 — 漆芸
漆。一滴から始まる日本の美。
Urushi: Beauty That Begins with a Single Drop
ウルシの木から採れる樹液は、塗料であり、接着剤でもある。その黒の上に金を蒔き、貝を嵌める。平安から江戸まで、三つの国宝で漆の時間をたどる。
漆とは、ウルシ科の落葉高木ウルシ(Toxicodendron vernicifluum)から採取される樹液であり、ウルシオールを主成分とする天然樹脂の塗料・接着剤である。漆で作られた工芸品を漆器といい、日本の漆器はその品質の高さから、中世以降、南蛮貿易を通じて世界各地へ輸出された。

蒔く、嵌める
蒔絵は、漆で文様を描き、それが乾かないうちに金や銀の粉を「蒔いて」定着させる技法である。「蒔絵」という言葉は平安時代に初めて現れる。夜光貝や鮑などの貝片を器面に装着する螺鈿とともに、日本の漆器を代表する加飾となった。
平安時代の「片輪車螺鈿蒔絵手箱」は、流水と車輪の意匠を蒔絵と螺鈿で表す。江戸時代初期、本阿弥光悦の作と伝わる「舟橋蒔絵硯箱」は、金・銀に加えて鉛を用い、光悦蒔絵の代表作とされる。尾形光琳の「八橋蒔絵螺鈿硯箱」もまた、金銀と貝、鉛を組み合わせて燕子花と橋を描く。
異なる素材が、ひとつの黒のなかで出会う。

三つの箱は、いずれも国宝に指定され、東京国立博物館が所蔵している。一滴の樹液から始まる仕事が、数百年を経ても光を失わないこと――それ自体が、漆という素材のいちばんの物語なのかもしれない。
この記事に登場する作品
出典・参考資料
- [1]片輪車螺鈿蒔絵手箱
文化庁 国指定文化財等データベース · 公的資料 · 根拠: 指定
- [2]舟橋蒔絵硯箱
文化庁 国指定文化財等データベース · 公的資料 · 根拠: 指定
- [3]八橋蒔絵螺鈿硯箱
文化庁 国指定文化財等データベース · 公的資料 · 根拠: 指定
- [4]Wikidata Q102389647(素材)
Wikidata · データベース · 根拠: 素材
- [5]漆
Wikipedia(日本語版) · 百科事典
- [6]蒔絵
Wikipedia(日本語版) · 百科事典
- [7]螺鈿
Wikipedia(日本語版) · 百科事典
- [8]Maki-e
Wikipedia (English) · 百科事典
- [9]Japanese lacquerware
Wikipedia (English) · 百科事典
- [10]舟橋蒔絵硯箱
Wikipedia(日本語版) · 百科事典


